2025.08.06健康経営とは?定義・背景・はじめ方を経営者目線で解説

「社員の健康なくして会社の発展なし」──私は常々そう考えています。社員が心身ともに健康であってこそ、企業は真に活力を得て成長できるものです。しかし実際には、自分や社員の健康管理を後回しにしてしまい、不調を抱えていても「こんなものだ」と見過ごしている人も多いのではないでしょうか。最近注目されている 「健康経営」 は、まさに経営者が従業員の健康を経営課題として捉え、積極的に取り組む経営手法です。本記事では、中小企業の経営者や健康経営に興味のある皆様に向けて、健康経営の定義や背景、始め方について、私の体験も交えながら分かりやすく解説します。

健康経営とは何か?その定義と目的

健康経営とは、企業が従業員の心と身体の健康管理を経営戦略の一環として位置づけ、健康維持・増進に戦略的に取り組む経営手法のことです。簡単に言えば、「社員の健康を大切にすることが会社の業績アップにつながる」という考え方に基づいた経営のスタイルです。

経済産業省の定義によれば、健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされています。また、企業が従業員への健康投資を行うことは「従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化」をもたらし、結果的に「業績向上や株価向上につながる」と期待されています。つまり社員の健康づくりへの投資はコストではなく将来的な利益に繋がる価値ある投資だということです。政府もこの健康経営を、日本人の健康寿命延伸や企業の生産性向上につながる取り組みとして推奨しており、厚生労働省や経済産業省が中心となって「あるべき企業経営の姿」として提唱しています。

健康経営が注目される背景

では、なぜ今「健康経営」がこれほど注目されるようになったのでしょうか。その背景には主に次のような社会的要因があります。

  • 少子高齢化と人手不足の深刻化: 働き手となる人口が減少する中で、一人ひとりの従業員にできるだけ長く元気に働いてもらうことが、企業存続の鍵となっています。社員の健康維持は労働生産性の確保や労働力不足の対策としてますます重要になっています。

  • 国民医療費の増大と企業負担: 日本の医療費は年々増加し、2014年以降は年間40兆円規模に達しています。健康保険組合の財政悪化も指摘されており、将来的に企業が負担する健康保険料や従業員の医療費負担が増えかねない状況です。そのため、企業レベルで従業員の健康増進・病気予防に取り組み、将来的な医療費の抑制につなげようという狙いがあります。

  • 政府による後押しと制度化: 少子高齢化による課題意識から、第2次安倍内閣は2013年に閣議決定した「日本再興戦略(JAPAN is BACK)」で健康経営の推進を盛り込み、経済産業省も2015年に「健康経営オフィスレポート」を発表するなど、国を挙げて健康経営の普及に乗り出しました。さらに2014年度からは「健康経営銘柄」(上場企業の中で健康経営に優れた企業を選定)、2016年度からは「健康経営優良法人認定制度」(規模別に優良な健康経営実践企業を認定)といった制度が創設され、企業の取り組みを顕彰・見える化する仕組みが整えられています。これにより「健康経営に熱心な会社」として社会的評価を受けやすくなり、多くの企業が参加するようになりました。事実、「健康経営優良法人2023」では大規模法人部門で2,676社、中小規模法人部門で14,012社もの企業が認定を受けており、ここ数年で中小企業にも健康経営の輪が急速に広がっていることが分かります。今や健康経営は一部の大企業だけでなく、日本中の企業経営者が注目すべきテーマとなっているのです。

健康経営によるメリットとは?

健康経営に取り組むことは、社員にとって嬉しいだけでなく企業にとっても多くのメリットがあります。主な効果を経営者目線で整理すると、次の通りです。

  • 労働生産性の向上: 健康な社員は集中力や業務効率が高まり、生産性が向上します。体調不良による欠勤やパフォーマンス低下が減るため、組織全体のアウトプットが上がります。

  • 人件費・医療コストの削減: 従業員の病気やケガが減れば、治療費や長期休職にかかるコストの削減につながります。病欠が減ることで人員の穴埋め残業や代替要員採用の負担も減り、結果として企業の経費節減になります。

  • 離職率の低下と人材定着: 健康に配慮した職場環境は従業員の満足度を高め、会社への愛着心も強くなります。その結果、社員の離職率(退職者の割合)が下がり、優秀な人材の定着率向上につながります。実際に、経済産業省の調査データでは全国平均の離職率がおよそ11.9%であるのに対し、健康経営優良法人に選ばれた企業では離職率5.7%と半分以下だったことが報告されています(離職率が低い「健康経営」実践企業。社員の内臓脂肪数値が減少!花王の“楽しみながら取り組む仕掛け”とは?

    ダイヤモンド・オンライン, https://diamond.jp/articles/-/356873)。離職が減れば採用・教育にかかるコストも削減できるため、企業にとって大きなメリットです。

  • 企業イメージ・採用力の向上: 従業員の健康を大切にしている企業であることは、社内外に良いイメージをもたらします。就職活動中の学生や求職者に対してアピールとなり、人材獲得競争でも有利です。また取引先や投資家からも「社員を大切にしている会社」として評価が高まり、信用力向上やESG投資の観点からプラスに働くでしょう。

このように健康経営は社員にも会社にもWin-Winの効果をもたらすと期待されています。業績向上や企業価値の向上にもつながることから、中長期的な経営戦略として取り入れる意義は大きいと言えます。

経営者自身が痛感した「健康」の大切さ(私の体験談)

私自身、恥ずかしながらかつては健康管理をおろそかにして痛い目を見た経験があります。仕事中心の生活で運動習慣もなく、食事も好き放題・お酒もかなり飲むという不摂生な生活を続けていたところ、ある日激しい腹痛に見舞われました。病院で診てもらうと胆嚢炎を起こしており、緊急手術で胆嚢を摘出する事態になってしまったのです。手術後はさすがに反省したものの、忙しさにかまけて結局生活習慣を大きく変えられないまま過ごしていました。すると今度は頸動脈狭窄(首の動脈の血管が細くなる病気)が見つかり、またもや健康不安が続くことになりました。

さすがに「このままではいけない!」と心を入れ替え、食生活を見直して運動も取り入れるよう決意。まずは食事内容を改善し、カロリーと脂質の制限に取り組んだところ、2か月で8kgの減量に成功しました。おかげで血液中の悪玉コレステロール値も正常値以下にまで下がり、体調が明らかに良くなりました。この時、いくら時間とお金があっても健康でなければ全てを失うと心から実感したのです。「健康は何にも代えられない財産」であり、自分自身が元気でいることが家族や社員、ひいては会社の幸せにつながると痛感しました。

経営者の中には「自分は多少無理してでも働くべきだ」「多少の不調は仕事に関係ない」と考える方もいるかもしれません。しかし、トップである経営者が不健康で倒れてしまっては会社も元気を失いますし、社員に健康管理を呼びかける説得力もなくなってしまいます。まず経営者自身が健康であること、そして社員にそれを示していくことが健康経営推進の第一歩だと、私の経験から感じています。

健康経営の本質は「現状の健康状態を知ること」

健康経営を進める上で最も大切なことは、現在の自分や社員の健康状態を正しく知ることです。単純なようですが、意外とこれができていない場合が多いものです。健康状態というと、身体の外側(例: 体格・筋力・運動能力など)と身体の内側(例: 血圧・血糖値・内臓の状態などの検査データ)、そして心の健康(メンタルヘルス)の3つの側面があります。どれか一つでも軽視すると本当の意味での健康とは言えません。

ところが、現状では「とりあえず年に一度の健康診断を受けてそれで終わり」という会社も少なくありません。しかし年1回の健康診断だけでは、自分の本当の健康状態を把握するには不十分です。健康診断の結果「要経過観察」や「要再検査」と言われても、そのまま放置してしまっていないでしょうか?異常のサインを見逃さず精密検査につなげること、生活習慣の改善に結びつけることが大切です。またメンタル面についても、ストレスチェックの実施や産業医・カウンセラーへの相談体制を整えるなど、社員の心の健康をケアする仕組みが必要です。

健康経営の本質は、こうした自分自身の健康状態を正確に知り、必要な対策を講じることにあります。そのためには日頃から社員の健康データやストレス状況に目を配り、問題の兆候を見逃さない経営姿勢が求められます。「健康診断を受けさせて終わり」ではなく、「社員一人ひとりの健康課題を把握し、会社として寄り添い改善をサポートしていく」ことこそが、真の健康経営と言えるでしょう。

健康経営を始めるには:進め方のステップ

健康経営を自社で実践しようと思ったとき、具体的に何から手を付ければ良いのでしょうか?経営者目線で考える導入の基本ステップを、以下にまとめます。

  1. 「健康宣言」をする: まずは会社として「社員の健康を大事にします」と内外に宣言しましょう。健康経営は経営課題として位置づけられるため、トップである経営者自らコミットメント(宣言文)を示すことが重要です。自社が目指す健康経営の意義や最終目標、経営陣のリーダーシップの取る姿勢などを明文化します。中小企業であれば、全国健康保険協会(協会けんぽ)の「健康宣言」に参加して支援を受ける方法もあります。

  2. 推進のためのプロジェクトチームを作る: 経営者だけで全ての施策を実行するのは難しいため、社内外のメンバーで健康経営推進チームを編成します。人事・総務担当者のほか、産業医や保健師など健康の専門家、社員の代表(健康意識の高い従業員)などをメンバーに加えましょう。多角的な視点で企画立案・実行できる体制を整えることで、より効果的な施策が期待できます。

  3. 現状の課題を把握する: 次に、自社の従業員の健康に関する課題を洗い出します。具体的には、過去の健康診断データを分析したり、社員アンケートや面談で生活習慣・不調の有無、職場の課題などをヒアリングします。ストレスチェックの結果や長時間労働の状況、運動習慣の有無なども確認しましょう。社内にノウハウがなければ外部の健康コンサルタントに相談する方法もあります。

  4. 目標設定と計画策定を行う: 把握した課題に対して、改善したい指標や目標値を設定します(例:「歩数平均◯歩アップ」「メタボ該当者を◯%削減」など具体的に)。そして、その目標を達成するためのアクションプランを策定します。計画には予算や担当、実施時期も織り込み、無理なく継続できる内容にすることが大切です。小さなことでも構いませんので、自社の規模や文化に合った施策を選びましょう。

  5. 施策の実行・効果検証と継続的な改善: 計画ができたら実際に施策を実行に移します。実施して終わりではなく、定期的に成果を検証し、改善サイクルを回す(PDCAサイクル)ことが成功のポイントです。「参加率は上がったか」「健康指標は改善したか」「社員の声はどうか」などをチェックし、必要に応じて施策を修正・追加していきます。経営者自身が定期的に進捗を確認し、社内にフィードバックすることで、社員の意識も高まり継続しやすくなります。良い取り組みは社内報や朝礼で称賛し、会社全体で健康経営を盛り上げていきましょう。

五洋医療器における健康経営の取り組み例

当社五洋医療器でも、社員の健康増進と安心して働ける職場づくりのために様々な健康経営施策を行っています。その一部をご紹介します。

  • 充実した健康診断・検診の提供: 法定の定期健康診断に加え、一定年齢以上の従業員には胃内視鏡や大腸内視鏡検査、女性社員には乳がん・子宮がん検診を会社負担で受診できるようにしています。通常の健診では見つけにくい疾病リスクも早期に発見するための体制です。

  • 運動習慣づくりのサポート: 社員が日常的に運動できるよう、運動にかかったジム利用料やスクール参加費の一部補助を行っています。例えばウォーキングイベントへの参加費補助や社内での体操プログラム実施などを通じて、楽しみながら運動習慣を身につけてもらう工夫をしています。

  • 食生活改善の支援: 社員の食事面での健康もサポートするため、栄養バランスに配慮した健康的な食材やお弁当を社内で安価に提供しています。外食やコンビニ食に偏りがちな方にも野菜中心のメニューを手軽に選べるようにし、社食や昼食の場で自然と健康になれる環境づくりを進めています。

これらの取り組みを継続してきたおかげで、悪性腫瘍(がん)の早期発見につながったケースも実際にありました。社員が重い病気になる前に見つけて治療できたことで、大事に至らずに済んだのです。健康経営に取り組んでいて本当に良かったと感じた瞬間でしたし、社員本人やご家族にも大変感謝されました。このように結果が出ると、会社としても健康経営の効果を実感できますし、ますます力を入れていこうという励みにもなっています。

おわりに:健康経営で社員も会社も元気に!

改めて強調したいのは、社員の健康なくして会社の発展はあり得ないということです。健康はすべての土台であり、社員が元気に働ける職場こそが強い組織を作ります。健康経営は決して特別なことではなく、「社員を大切にする経営」の延長線上にあります。経営者が本気で社員の健康と向き合えば、必ずや生産性向上や離職率低下といった形で会社に跳ね返ってきます。実際に健康経営に取り組む企業が増え、良い成果を上げている今だからこそ、ぜひ一歩踏み出してみてください。

五洋医療器株式会社では、こうした健康経営の推進を全面的にサポートしております。「何から始めればいい?」「うちの会社でもできる施策は?」といったご相談にも、豊富な経験を持つスタッフがお応えします。

健康経営に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽に五洋医療器にお問い合わせください。社員がいきいきと働き、会社がさらに元気になるためのお手伝いを、私たちがお約束いたします!


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