2024.04.012024年度診療報酬改定の注目点|基本方針と医療DXの推進

診療報酬改定は2年に一度の見直しが行われていますが、2024年度は少子高齢化とインフレなどを背景とした改定内容が発表されました。

2024年度の診療報酬改定は、医療・介護・障害福祉の3制度が改定される年という意味でも注目されています。

今回の記事では、差し迫る2040年問題に向けた医療政策の変革と、2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXの推進について解説していきます。

医療政策の変革と2040年問題

近年の医療政策の変革は、2040年に迫る少子高齢社会における問題に対して、取り組み続けられています。

2006年の医療制度改革では高齢者増加による医療費負担に対して、高齢患者の医療費負担の引き上げが行われました。格差なき医療の提供を目的に、一定の所得がある高齢者が対象です。

また、2008年には「高齢者医療保険制度」を創設。75歳以上を後期高齢者とした保険診療体制が開始となります。2020年度診療報酬改定においては、救急病院における勤務医への働き方改革への対策のため診療報酬本体は0.55%の引き上げられました。

そして、医療介護現場では高齢者急増と生産年齢人口の減少に伴う「2040年問題」により、健全な社会経済の維持や成長問題が深刻化する問題に直面しています。

少子高齢社会の中で安心安全な医療を提供するためには医療機関の連携を強化し、効率性を高める必要があり、今後の診療報酬改定には注目が必要です。

2024年度診療報酬改定の4つの基本的視点 

2024年度の診療報酬改定が、厚生労働省より「令和6年度の診療報酬改定の基本方針の概要」として掲げられました。

2024年度診療報酬改定の4つの基本的視点は、以下のとおりです。

・人材確保・働き方改革の推進
・地域包括ケアシステムの深化・推進
・安心安全で質の高い医療の推進
・医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

改定された基本的視点について、詳しく解説していきます。

人材確保・働き方改革の推進

30年ぶりの高首位順となる賃上げが行われていますが、医療分野では賃上げが他の産業に追いついていない状況です。

高齢化などによる医療需要の増加に対して、人材確保が深刻な課題であり、将来的にも生産年齢人口の減少による支え手不足が懸念されています。医療従事者に対しての必要な処遇改善などを通じて、医療現場を支える人材確保のための取り組みを進めることが急務です。

さらに、医師などの働き方改革の推進は、患者に対して提供される医療の質や安全性を確保に繋がります。患者に対して提供される医療の質や安全の確保と同時に、持続可能な医療提供体制を維持していく上でも重要です。

医療提供体制の改革が進む中で、安全性や地域医療の確保や患者や保険者の視点を考慮し、より実効性のある診療報酬の対応を検討する必要があります。

地域包括ケアシステムの深化・推進

少子高齢化により働き手が不足する場合でも、全ての人が適正な医療を受けるためには、地域包括ケアシステムを充実させることが必要です。

2025年以降も人口少減少・高齢化が進む中で、医療機関や在宅医療と介護サービスの適正な役割分担と、切れ目のない連携を進める必要があります。

定期的な診療を必要とする慢性疾患の疾病などをもつ患者に対して、地域における医療と介護・障害福祉サービスなどの地域包括ケアシステムが不可欠です。

地域包括ケアシステムの円滑化のためには医療DXを推進し、最近の感染症対応の経験や影響を考慮しつつ、地域全体での医療機能の分化と強化と外来・入院・在宅医療の連携を着実に進める必要があります。

安心安全で質の高い医療の推進

物価高騰に直面している現状であっても、患者によって安心安全で質の高い医療を提供できる取り組みが必要です。

患者の安心・安全を確保しながら、医療技術の進歩や疾病の変化に対応していきます。第三者による客観的な評価やアウトカム評価を通じて、イノベーションを推進し、新たなニーズにも対応できる医療を実現する取り組みを評価していきます。

医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

高齢化や医療技術進歩、高額な医薬品開発による医療費増大が見込まれる中、国民皆保険の機能を維持するためには、医療保険制度の安定性・持続可能性を高める取り組みが必要です。

2025年に団塊の世代が全て75歳以上となる年に向けて、これまで医療保険制度の安定性・持続可能性の向上につながる政策を進めてきました。2025年をまたぐ今回の改訂では、さらに政策を着実に進めていく視点が不可欠となっています。

医療関係者が協力して、医療サービスの質を維持・向上させると同時に、効率化と適正化を図ることが求められます。

医療現場におけるDXの推進〜2024年度診療報酬改定〜

医療DXとは、厚生労働省が以下のように説明しています。

医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること

少子高齢化に対して国民の健康増進と連続的で高品質な医療の提供を目指すには、医療領域のデジタル化を推進し、保健や介護を含む医療情報の積極的な活用が極めて重要です。

医療・介護分野におけるDXの推進のための主要業績評価指標を3項目紹介していきます。

電子カルテ情報共有サービス

電子カルテ情報共有サービスは2024年度中に運用が開始となり、今回の診療報酬改定でも、各項目でキーワードとなっています。

本サービスは国民の健康増進や質の高い医療を提供するだけに留まらず、自然災害時・驚異的な感染症の影響時にも適正な医療が受けられることもメリットです。

具体的に電離カルテ情報共有サービスで提供される内容や、メリットについて解説していきます。

紹介状送付サービス

紹介元の医療機関が発行した診療場提供書や退院時サマリーを、紹介先の医療機関や介護施設が電子的に取得できるサービスです。

紹介元は印刷や封入、郵送などのコスト削減ができ、紹介先では診療情報のカルテ内へのデータ化が不要となります。

患者にとっても迅速な情報共有が可能になることや、転院時に持参物忘れや紛失などのストレスも軽減されるメリットがあります。

6情報閲覧サービス

患者の6情報を患者本人と全国の医療機関などが取得・閲覧できるサービスです。

患者の6情報は以下のとおりです。
・傷病名
・アレルギー
・薬剤禁忌
・感染症
・検査
・処方

患者情報が迅速かつ正確に共有されることで、問診の効率化や診療の質向上にも繋がります。また、薬剤師による服薬指導では、患者個人の病状に応じた適切な服薬指導ができ、質の高い医療提供が可能です。

健診文書閲覧サービス

健診文書閲覧サービスは、患者が受けた各種検診結果を医療保険者(実施主体企業など)や全国の医療機関、本人などが閲覧できるサービスです。

健診医療機関から直接支払基金にデータで健診情報が連携されるため、連携先に応じた報告書作成やパンチ入力のコスト削減が見込めます。

保険診療の診療時に、従来よりも直近の健診データを活用できるメリットあります。

マイナ保険証の受診の推進

2024年12月2日に現行の健康保険証の新規発行を終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行されます。

医療機関や薬局窓口で、患者の直近の加入医療保険や自己負担限度額などの資格情報が確認でき、期限切れの保険証で発生する過誤請求や手入力による事務コストが削減可能です。

また、患者側としてもマイナ保険証の利用により、医療機関や薬局において特定健診などの情報や薬剤情報が閲覧でき、より良い医療が受けられる環境となります。

通常、診療情報・薬剤情報などの閲覧は、患者がマイナンバーカードによる本人確認した同意した場合に限られます。災害時は特別措置として、マイナンバーカードや保険証を持参しなくても、本人の同意があれば、情報閲覧可能な措置も可能です。

しかし現状、マイナ保険証の利用状況は2024年2月調査では、カード保有者(全人口73.1%)のうち1/4程度しか利用経験がありません。

医療機関などは掲示物でのお知らせや窓口対応の工夫により、医療DX推進体制の評価に繋がるでしょう。

電子処方箋の活用

電子処方箋とは、従来の紙発行の処方箋ではなくデジタルデータで運用する仕組みです。

患者の同意のもとで全国の医療機関や薬局における過去3年間の薬剤情報・直近の処方結果が参照できるようになります。禁忌薬剤などの情報共有もあるため、調剤薬局では調剤時の重複投薬や併用禁忌の有無などに活用されます。

医療DXの推進として、2025年3月までにオンライン資格確認を導入した医療機関・薬局への「電子処方箋導入」を目指した支援が行われます。

医療DXに関連した診療報酬項目と評価法

医療DXに関連した診療報酬項目と評価表について、3つの加算について説明します。
・医療DX推進体整備加算
・往診時医療情報連携加算
・特定集中治療室遠隔支援加算

それぞれの加算点数や条件について、それぞれ解説していきます。

医療DX推進体整備加算

医療DX推進体制整備加算とは、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を活用できる体制が整備されていることです。また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、医療DXに対応できる体制の確保も評価の1つです。

医療DX推進体制整備加算

点数

8点(初診時に月1回に限り8点が算定可能)
調剤基本料にも加算あり。
算定基準 ・オンライン請求を行っていること
・オンライン資格確認を行う体制を有していること
・マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を一定程度有していること
・情報取得に関して当該保険医療機関の見やすい場所およびウエブサイト等に掲示していること

他にも在宅医療DX情報活用加算、訪問看護医療DX情報活用加算もあります。

往診時医療情報連携加算

地域医療情報ネットワークに入ることで加算となるのが、往診時医療情報連携加算です。

往診時医療情報連携加算
点数 200点
算定基準 ①在支診・在支病以外の医療機関が訪問診療を行っている患者に、在支診・在支病と定期的なカンファレンスを行っているか
②ICTを用いて診療情報や患者の急変時対応方針について再診の情報を確認できる
①②を行い、平時の連携体制を構築して、当該在支診療又は在支病が往診を行った場合を評価

地域連携ネットワークに入ることが必要であり会費が必要となる可能性が高いですが、加算点数で補填できます。

また、地域で情報共有できるグループエアを活用して、必要な患者情報を取得した上で、往診を行うことがポイントです。

特定集中治療室遠隔支援加算

特定集中室遠隔支援加算は、遠隔ICUモニタリング(Tele-ICU)により一定基準の施設から支援を受けることを評価としています。

特定集中治療室遠隔支援加算
点数 980点
施設基準

①ICU5・6における施設基準を満たす
②支援側がICU1・2における施設基準を満たす

②の医療機関から入院患者についての常時モニタリングを受けるとともに助言を受けられる体制がある

特定集中治療室5・6とは、治療室内でなく、病院内に専任の医師(宿日直可)が常時配置され、治療室内に適切な研修を修了した専任の常勤看護師を配置したものを指します。

2024年度診療報酬改定から見えてくる医療DXのメリット

2024年度の診療報酬改定から見えてきた医療DXでは、国は2030年までに全ての医療機関や薬局に電子カルテや患者情報を読み取る設備を導入することが必須です。

電子カルテ導入には初期費用が必要で、従来では導入後に保守メンテナンス料などのコストが医療機関の負担となり、医療DXは「コスト」といわれてきました。しかし、現状も電子カルテ導入には初期費用が必要が必要ですが、以下の補助金が活用できます

・IT導入補助金(中小企業基盤整備機構)
・医療情報化支援基金

もちろんランニングコストはかかりますが、診療報酬改定のさまざまな医療DX関連の算定によるリターンによるカバーが可能です。従来の医療DXは「コスト」という概念から「投資」として導入することで、地域との医療情報の共有や迅速な診療が可能になります。

医療DXが推進されることでオンライン診療が標準化し、非対面で遠隔地からの専門的医療が受けることが可能です。医療機関としても診療報酬明細書の作成、経理関連の業務、デジタルツールで自動化により、医療従事者の大幅な業務効率化やコスト削減が見込めるでしょう。

他にも、医療DXの推進により電子カルテ内のデータを分析を活用した、健康管理サポートや新薬の開発に役立てることも可能です。

まとめ

今回は2024年度診療報酬改定では、少子高齢化の中で持続可能な医療を提供するための改定について議論がなされました。

2024年度診療報酬改定の基本方針
・人材確保・働き方改革の推進
・地域包括ケアシステムの深化・推進
・安心安全で質の高い医療の推進
・医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

2040年に迫る高齢者急増と生産年齢人口の減少に対して、医療現場では人材確保とともにICTを用いた医療DXの推進が不可欠です。

地域のコミュニティの中で安心安全な医療の提供する医療機関として、診療報酬改定の内容を理解し、事前に準備を進めていくことが求められています。

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