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2024年度診療報酬改定は、後期高齢者の増加による医療の需要と供給のバランス崩壊が懸念される「2025年問題」や、高齢者人口が全体の35%以上を占める「2040年問題」を見据えた内容となりました。
今回は2024年度診療報酬改定の概要と内容理解のためのポイントや、診療報酬を受けて経営での備えについて解説していきます。
診療報酬改定内容を理解することは、安定した医療体制の構築だけでなく、地域における医療機関としての役割を十分果たすことができるでしょう。
2024年度の診療報酬改定は「医療」「介護」「障害福祉サービス」の報酬改定が同時にされる「トリプル改正」として注目されました。
診療報酬は2年に1度、介護と障害福祉の報酬は3年に1度の改定でトリプル改正となるのは6年に一度のため、重要かつ大規模な改定が予測されました。
結果的に、団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」と、生産年齢人口減少による65歳以上の人口が35%となる「2040年問題」に向けた準備段階の改定と言えるでしょう。
そして、2024年度の診療報酬改定の基本視点は以下の通りです。
・現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
・ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
・安心・安全で質の高い医療の推進
・効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
また、改定内容の施行は3月に告示し4月に施行が通例ですが、改定期間が短く、電子カルテやレセプト改定作業の大きな負担が問題視されていました。
そこで2024年度診療報酬改定より薬価改定以外の改定事項は、6月1日に施行することで了承されています。
2024年度診療報酬改定を理解するためのポイントは以下の5点です。
・外来医療の機能分化・強化等
・第8次医療計画の視点
・医療DXの推進
・医療機能に応じた入院医療の評価
・医療・介護・在宅サービスの連携
それぞれについて詳しく解説していきます。
2024年度の診療報酬改定での注目ポイントは、外来医療の機能分化・強化です。
「かかりつけ医機能」に関しては2025年4月に創設される制度により、医療機関が地域住民への情報提供や、地域における有効的な医療機関の仕組みの協議と体制構築が重要視されています。
今回は地域包括診療料の加算評価見直しによりかかりつけ医とケアマネとの連携を促進を図っています。
外来診療で長期間の通院が必要な生活習慣病については、特定疾患療養管理料の対象疾患から生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)が除外され、生活習慣病管理料Ⅱが新設されました。
診療ガイドライン等を参考とした質の高い疾患管理のためには、療養計画書を用いた説明や薬剤師・看護師など含めた多職種連携が必要となります。
また、生活習慣病管理料をはじめとした外来医療では、リフィル処方や長期処方の活用も期待されています。
日帰り手術の評価見直しでは、麻酔科医の勤務が要件となっていた短期滞在手術等基本料が見直されました。
外来で対応できる手術は地域の診療所や中小病院へ、大規模病院では専門特化した診療に集中する役割分担を促進する厳しい内容となりました。
一方で腫瘍化学療法に関しては外来での評価を高くし、24時間対応できない診療所に対しては地域医療連携を行った場合の外来腫瘍化学療法診療料3が新設されました。
外来医療の機能分化・強化は地域における診療所や病院の役割分担を明確化し、地域医療連携の推進において効果的かつ効率的な医療体制が構築することを期待されています。
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第8次医療計画とは2024年から6年間の計画で始められる策定で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りとなった地域医療の課題や、人口構造変化への対応を図ることです。
地域医療構想や外来医療、かかりつけ医の機能など複数のポイントが重なりあった計画内容で、今回の診療報酬改定の基本視点と重なる項目が多くあります。
第7次計画時に追加した「医師確保計画」や「外来医療計画」も合わせて見直し、二次医療圏の設定についても議論を行い、今後の改定にも反映される内容です。
医師確保については患者や国民に対して提供される医療の質・安全を確保すると同時に、持続可能な医療提供体制を維持するために、医師の働き方改革に焦点を当てた診療報酬の議論もなされてきました。
医師をはじめとした医療従事者の働き方改革の取り組みとして、柔軟な勤務体制、ICTの活用・タスクシフティングを推進することが挙げられます。
同じ病院であっても職種ごとの連携から、地域という枠組みの中での協力連携体制が診療報酬の評価に繋がってきます。
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医療DXの推進において、電子処方箋の普及を促進することや電子カルテ情報共有サービスを構築し、地域での情報共有を拡大することが重要です。
オンライン資格確認の範囲拡大も進められ、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療、地方独自の医療費補助などの情報がマイナンバーと連携されていきます。
他にも、新型コロナウイルスを踏まえて次の感染症危機に対応するための対策も行われているのです。
医療DXに関連した診療報酬項目も追加された加算内容には、地域連携を必要とする往診時医療情報連携加算や、遠隔地からの専門的医療が受けられる特定集中治療室遠隔支援加算もなどがあります。
オンライン診療においては2022年度の改定で大きな変更がありましたが、今回もCKD対策として行われた診療報酬改定によりオンライン診療も算定可能となりました。
患者の病状や居住地域に応じて柔軟な対応のできるオンライン診療は、医師の働き方改革に対しての評価とも言えるでしょう。
医療におけるICTの推進は高品質な医療提供体制を整えると共に、地域における情報の標準化と効率化により医療の質の向上が期待されています。
2024年診療報酬改定では、患者の状態および必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価が多く盛り込まれています。
後期高齢者の救急搬送が増加する中で入院機能の分化・強化を整えるべく、中等症急性期疾患の患者に対して地域包括医療病棟入院料が新設されました。
特に増加する高齢者や特別なケアを必要とする救急患者を受け入れるために、地域の救急医療機関の役割分担を明確にする必要があると考えられています。
初期救急・第二次救急・第三次救急医療機関ごとの受け入れる患者の重症度を明確にして、急性期入院医療の提供と機能分化が焦点です。
高度医療センターなどでは救急患者連携搬送料を新設し、急性期病院から地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟への下り搬送などの転院の促進を評価しています。
地域医療が適正に運営できるための連携は必要であることが明確となっています。
他には小児・周産期医療に関わる人材確保のために、新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料や小児入院医療管理料は手厚い評価となっています。
高齢者だけでなく、重症度が高い患者や小児・周産期に対しての医療現場の確保のために、現場に即した報酬改定になっている点も大きなポイントです。
2024年度診療報酬改定では医療・介護・在宅サービスの連携強化により、地域包括ケアシステムの推進を推し進めています。
療養の場は入院病床だけでなく、在宅や介護施設など可能な限り住み慣れた環境で自分らしい暮らしを継続できるために、地域の包括的なサービス提供が重要です。
今回は高齢社会における在宅療養の場を適正化するために、訪問診療に関しての改定も多く行われました。
終末期在宅医療を除いた在宅療養患者に対しての訪問診療は、診療患者数や回数に応じた評価の見直しがなされた一方で、ICT連携を評価した介護保険施設等連携往診加算や在宅医療情報連携加算が評価されました。
今後も増加するとみられる要介護者等の高齢者に対応するため、急性期入院医療からリバビリテーション、訪問医療、薬剤管理などが連携して、双方向の情報提供とケアの検討がなされる環境を推進しています。
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2024年度診療報酬改定では診療報酬本体プラス0.88%となり、9回で連続の引き上げで過去10年で最高水準となりました。
しかし、2024年3月5日に開催された「三保連合同シンポジウム」では、以下のような厳しい意見が出ました。
光熱水費等の高騰は医業収益の1%を占める上昇幅であるため、『プラス2%』程度の引き上げが必要であった。物価上昇分については補助金等での対応が必要だ。そうでなければ患者数が少ない地方病院では診療報酬収入に限界があり、経営の危機が訪れることとなるだろう。 |
外保連の岩中督会長:埼玉県病院事業管理者
消費者物価指数の上昇に鑑みれば、せめて『プラス1%』に乗せてほしかった。材料費等が上がっている点を踏まえれば、実質的なドクターズフィー分は『マイナス』になっている。 |
内保連の待鳥詔洋副理事長:国立国際医療研究センター国府台病院放射線科診療科長
また物価上昇に対応するために、診療報酬にも物価スライドを導入すべき |
内保連の小林弘祐理事長:北里研究所理事長
参考:2024年度診療報酬改定、本体プラス0.88%だが、物価高騰を考慮すれば「不十分」―内保連・外保連・看保連|GemMed
世の中のインフレに対して医療業界の賃上げがスムーズに進まない現状は、今に始まったことではありません。
少子高齢化による医療従事者の人手不足は、年々深刻になると容易に予測できる状況です。
まずは医療従事者の待遇を改善し、より良い人材確保を重視していく必要があります。
診療報酬改定で経営の備えを考えるうえでは、今回の改定の基本方針にもある医療DXは大きなポイントとなってきます。
医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進は、労働人口減少時代における人材不足や、在宅を含めた療養生活の多様性からも経営を考えるうえで避けて通れない状況です。
2024年度診療報酬改定を受けて日本の状況を耐え抜ける医療体制を構築するためは、医療と介護、障害福祉サービスの連携を強化する地域連携が重要となってきます。
患者の疾患や状態に応じて適切な医療を提供するには、機能分化・強化を促進し、効果的・効率的な提供体制を整備する必要があります。
今回の改定では下り搬送を促進するために、急性期・地域包括・回復期リハなどの医療機能に応じた入院評価が見直され、医療連携の重要性が鮮明となりました。
また、在宅医療では患者の状態の多様性に応じるためにも、ICTを用いた地域の関係機関との情報連携は欠かせません。
医療機関として自己完結型の医療提供でなく、地域における医療機能を明確化する必要があります。
医療の質の向上のためにもさまざまな職種や機関との連携を図り、2024年度診療報酬改定を踏まえた体制作りが急がれます。